労働災害防止対策の例を工場の事故から学ぶ 機械点検・フォークリフト・転倒への具体策とリスクアセスメントの進め方
労働災害防止対策の例を、厚労省の機械点検・フォークリフト・転倒事例から紹介。運転停止と再起動防止、横断通路の指定、床の放置物の除去を具体的に説明します。注意喚起だけに頼らず、設備や作業方法を見直す優先順位と、現場でリスクアセスメントを進める手順、法定措置と推奨策の違いを整理します。
労働災害防止対策の例と工場での進め方
労働災害防止対策の例には、機械点検時の運転停止と再起動防止、フォークリフトの走行路と歩行者の横断場所の管理、床の放置物の除去があります。注意喚起や教育だけに頼らず、法定措置を実施した上で、危険な作業をなくす方法や設備による対策を優先して検討します。厚生労働省のリスクアセスメントの解説とリフターの災害事例を基に、現場の作業や設備を見直します。
工場で使える労働災害防止対策の例
以下は、厚労省が掲載する事故の原因と再発防止策です。対策を導入した後の効果を示す成功事例ではありません。自分の職場と、作業・設備・人の動きがどこまで共通するかを確かめて使ってください。
機械点検は危険範囲に入らずにできる構造へ
コーヒー缶製造工場で、点検・締め付け作業中の作業者が、シートリフターとガイドの間に腹部を挟まれて死亡しました。上昇中のリフターに乗り込もうとしたと推定されています。非常停止装置がなく、点検・補修の安全手順と教育も不十分でした。厚労省のリフター災害事例に原因と再発防止策が掲載されています。
この事例で示された対策は、まず点検用の開口部などを設け、搬器に乗らずに点検できる構造にすることです。やむを得ず立ち入る場合には確実に停止させます。非常停止装置や防護覆いのインターロック、非定常作業の手順と教育も挙げられています。点検時に電源を遮断できるよう、生産計画にも織り込むとされています。同事例の再発防止策
現場では、通常運転中の作業だけを見て終わらせないでください。清掃、詰まり除去、点検、修理の際に、手や体を危険な範囲へ入れる作業がないかを洗い出します。その上で、立ち入らずに作業できる構造への変更を検討します。事例の安全手順に関する対策
労働安全衛生規則第107条は、掃除、給油、検査、修理、調整で危険のおそれがある場合、原則として機械の運転停止を求めています。停止時には、施錠や表示板などにより、作業者以外が運転することを防ぐ措置も必要です。危険箇所の覆いなどで危険を防止できる場合には、運転停止の例外があります。非常停止ボタンを設けるだけで、停止と再起動防止に代えることはできません。
フォークリフトは走行路と横断場所を決める
印刷工場で、本を後退運搬していたフォークリフトが走行路上の作業者に接触し、作業者が死亡した事例があります。厚労省は、後方確認不足に加え、横断通路が設定されていなかったことや、関係者への教育不足を原因に挙げています。運転者は必要な技能講習も修了していませんでした。フォークリフトの災害事例
対策を「後ろをよく見る」で終わらせず、歩行者が走行路を横断する場所を指定します。横断前の一旦停止と左右確認、後退時の後方安全確認を、運転者と歩行者の双方に周知します。必要な資格を持つ人を配置することも、同事例の再発防止策です。公式の対策一覧
労働安全衛生規則第151条の3は、フォークリフト等の運行経路や作業方法を示す作業計画を定め、計画に沿って作業し、関係労働者へ周知することを求めています。同規則第151条の7には、運転中の車両や荷との接触で危険が生じる箇所への立入りを禁止する措置が定められています。誘導者を配置して誘導させる場合には例外があります。
通路を指定するだけで危険が残るなら、歩車分離のための柵など、設備による対策も検討してください。リスク低減措置の優先順位に沿った提案であり、この印刷工場での実施状況や効果を示すものではありません。
転倒は床に物を残さない置き場づくりから
クリーニング工場で、結束機付近の床に落ちていたバスタオルを踏んで滑り、足の小指を骨折した事例があります。収納箱がなく、クリーニング物が放置され、機械周囲の整理整頓も不十分でした。バスタオルによる転倒事例
公式の再発防止策は、収納箱を用意して床への放置をなくすこと、滑りにくい履物を使うこと、転倒防止の教育・研修を行うことです。「足元に注意」と伝える前に、作業中の物をどこへ置くかを決めます。収納箱の設置は、この事例に対する対策であり、全職場に共通する法的義務という説明ではありません。同事例の再発防止策
床の配線も確認対象です。デイサービス施設では、洗濯物の運搬中に扇風機のコードにつまずき、膝を強打して骨折した例があります。公式対策には、歩行床面にコードを放置しないこと、床に固定したつまずきにくい形状のモールで覆うこと、足元が見えないほど荷物を抱え込まないことが挙げられています。工場で起きた事故ではありませんが、配線と運搬方法を点検する際の参考になります。電源コードによる転倒事例
注意喚起だけに頼らない対策の選び方
厚労省は、法定事項を必ず実施した上で、リスクを下げる措置を次の順に検討すると説明しています。教育や保護具を省くという意味ではありません。先に危険をなくす方法や設備対策を検討し、それでも残る危険に対応します。リスクアセスメントの解説
| 検討する順序 | 現場で考えること |
|---|---|
| 本質的対策 | 危険な作業を廃止・変更できないか |
| 工学的対策 | 危険範囲に入らずに済む構造や防護設備にできないか |
| 管理的対策 | 作業手順や教育で何を補うか |
| 個人用保護具 | なお残る危険にどの保護具で対応するか |
リフターの例なら、「点検時は注意する」という教育より先に、搬器に乗らず点検できる構造を考えます。床のタオルなら、収納箱を用意し、放置しない方法を決めます。注意する人の負担だけを増やさず、危険が生じる作業や置き方を変えるためです。リフターの対策と転倒の対策を、自職場の作業と照らして検討してください。
現場で進めるリスクアセスメント
対策例を選ぶ前に、誰がどこで負傷するのかを具体化します。厚労省が示すのは、危険性・有害性を特定し、負傷や疾病の重篤度と発生可能性からリスクを見積もり、優先順位を定めて低減措置を検討・実施する手順です。厚労省の説明を現場向けに整理すると、次の流れになります。
- 対象作業を選ぶ。通常運転に加え、清掃、点検、修理、運搬も含めます。
- 危険を具体化する。「誰が、どこで、何により、どう負傷するか」を書き出します。
- 重篤度と発生可能性を見積もり、対策の優先順位を決めます。
- 法定措置を確認し、作業の廃止・変更、設備、手順・教育、保護具の順で対策を検討します。
- 対策を実施し、対策後の状態と残る危険を確認します。
例えば機械点検なら、点検のために入る場所と、動く機械に挟まれる箇所を対応させて考えます。フォークリフトなら、運行経路のうち歩行者が横断する場所を確認します。転倒なら、床に物や配線がある場所に加え、荷物で足元が見えなくなる運び方も見直します。事例の対策をそのまま並べるのではなく、自職場で残っている危険に対応する措置を選んでください。リスク低減措置の検討手順
管理用の記録には、担当者、実施期限、残る危険も記入すると、未実施の対策を追いやすくなります。これは法令で定められた様式の紹介ではなく、対策の進み具合を管理するための提案です。手順を組む際は、厚労省のリスクアセスメントの案内も参照してください。
一般的なリスクアセスメントは、労働安全衛生法第28条の2に基づき、製造業・建設業等の対象事業者について努力義務と説明されています。ただし、機械の運転停止など、個別に義務づけられた安全措置まで任意になるわけではありません。リスクアセスメントの位置づけと労働安全衛生規則を分けて確認してください。
RegAffairs AIの工場で労働災害を防ぐ対策への回答でも、日本の安衛法令と機械災害データベースを引用しています。