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Guide · 2026-10-25 · 1 min

毒物及び劇物取締法(毒劇法)とは?毒物・劇物の定義と営業登録、医薬用外の表示・保管・廃棄、施行令と改正を詳しく解説

毒物及び劇物取締法(毒劇法)は、主に急性毒性による健康被害のおそれが高い化学物質を規制する法律です。毒物・劇物・特定毒物の定義、製造・輸入・販売の登録と更新、取扱責任者、医薬用外毒物・劇物の表示色、保管・廃棄、事故届を解説します。登録のない業務上取扱者の義務や施行令、最近の改正も確認できます。

毒物及び劇物取締法(毒劇法)とは

毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号、略称「毒劇法」)は、毒物と劇物について「保健衛生上の見地から必要な取締を行うこと」を目的とする法律です(第1条)。所管は厚生労働省で、製造・輸入・販売の登録、毒物劇物取扱責任者、「医薬用外毒物」「医薬用外劇物」の表示、保管、廃棄、運搬、事故時の届出を定めています。

厚生労働省の説明では、対象は「日常流通する有用な化学物質のうち、主として急性毒性による健康被害が発生するおそれが高い物質」です(厚生労働省 毒物劇物の規制)。硫酸、水酸化ナトリウム、メタノールも法の別表第二に掲げられています。製剤の濃度などによる除外もあるため、物質名だけで製品を判定しないでください。

毒物・劇物・特定毒物とは

第2条と別表では、次の区分を定めています。特定毒物は毒物の一部です。

区分定義(第2条)法の別表にある例
毒物別表第一に掲げる物で、医薬品・医薬部外品以外のものシアン化水素、シアン化ナトリウム、水銀、砒素、ニコチン
劇物別表第二に掲げる物で、医薬品・医薬部外品以外のものアンモニア、塩化水素、過酸化水素、水酸化ナトリウム、硫酸、硝酸、メタノール、ホルムアルデヒド
特定毒物毒物のうち、別表第三に掲げるもの四アルキル鉛、モノフルオール酢酸

別表は第一が28号、第二が94号、第三が10号です。各別表の最後の号は、含有製剤などを政令に任せています。この政令が毒物及び劇物指定令で、指定の多くと濃度による除外はここに書かれています。該当するかどうかは、法の別表と指定令をあわせて確認してください。指定令の読み方は毒物及び劇物指定令の解説にまとめています。

医薬品と医薬部外品は定義から外れます。薬の毒性は医薬品医療機器等法第44条の「毒薬」「劇薬」で扱い、表示も違います。毒薬は黒地に白枠・白字で「毒」、劇薬は白地に赤枠・赤字で「劇」です。

特定毒物とは

特定毒物は毒物の中でも特に厳しく扱われます(第3条の2)。製造できるのは毒物劇物製造業者と特定毒物研究者だけ、輸入できるのは輸入業者と特定毒物研究者だけです。使えるのは特定毒物研究者と、品目ごとに政令で指定された「特定毒物使用者」に限られます。研究者は学術研究以外に使えず、使用者は政令で決めた用途にしか使えません。たとえば施行令第1条では、四アルキル鉛を含む製剤の使用者は石油精製業者で、用途は「ガソリンへの混入」です。所持できる人も、毒物劇物営業者、特定毒物研究者、特定毒物使用者に限られます。

一般の人にもかかる規定

業者でない一般の人にかかる規定もあります。第3条の3は、トルエンそのもの、ならびに酢酸エチル・トルエン・メタノールのいずれかを含むシンナー、接着剤、塗料などを、みだりに摂取・吸入することと、その目的で所持することを禁じています(施行令第32条の2)。第3条の4は、ナトリウム、ピクリン酸、亜塩素酸ナトリウムとそれを30%以上含む製剤、塩素酸塩類とそれを35%以上含む製剤を、正当な理由なく所持することを禁じています(施行令第32条の3)。

毒物劇物営業者の登録

毒物劇物営業者とは、毒物劇物の製造業者、輸入業者、販売業者のことです(第3条第3項)。登録なしにできないことは次のとおりです(第3条)。

  • 販売・授与の目的で製造する(製造業の登録)
  • 販売・授与の目的で輸入する(輸入業の登録)
  • 販売・授与する、またはその目的で貯蔵・運搬・陳列する(販売業の登録)

登録は製造所、営業所、店舗ごとに都道府県知事が行います(第4条第1項)。販売業の店舗が保健所を設置する市や特別区にあるときは、市長や区長です。更新は製造業と輸入業が5年ごと、販売業が6年ごとで、更新しないと効力を失います(第4条第3項)。

製造業者や輸入業者は、自社の製品を他の毒物劇物営業者に販売または授与するだけなら、販売業の登録はいりません。ただし、この例外は営業者向けに限られます。営業者でない最終ユーザーに渡すなら、販売業の登録も必要です。

販売業の登録は3種類です(第4条の2、第4条の3)。

種類扱える品目
一般販売業品目の制限なし
農業用品目販売業農業上必要な毒物劇物で、厚生労働省令で定めるもの
特定品目販売業厚生労働省令で定める毒物劇物

設備が省令の基準に合わないとき、または登録を取り消されてから2年以内は、登録を受けられません(第5条)。施行規則第4条の4は、毒物劇物を他の物と分けて貯蔵できること、貯蔵場所と陳列場所にかぎをかける設備があること、運搬用具が漏れないことを求めています。貯蔵場所が性質上かぎをかけられないものは、周囲に堅固なさくが必要です。氏名や住所、設備の重要な部分を変えたときや廃業したときは、30日以内に届け出ます(第10条)。

毒物劇物取扱責任者

毒物劇物営業者は、毒物劇物を直接扱う製造所、営業所、店舗ごとに、専任の毒物劇物取扱責任者を置きます。設置や変更は30日以内に届け出ます(第7条)。検索では「毒物劇物管理責任者」と呼ばれることもありますが、法律上の名前は取扱責任者です。資格者は、薬剤師、省令で定める学校で応用化学に関する学課を修了した人、都道府県の毒物劇物取扱者試験の合格者です(第8条)。18歳未満の人や中毒者などはなれません。試験には一般、農業用品目、特定品目の3種類があります。農業用品目と特定品目の合格者は、その品目だけを扱う施設でしか責任者になれません。

医薬用外毒物・医薬用外劇物の表示

表示のルールは第12条にあります。毒物劇物営業者と特定毒物研究者は、容器と被包に「医薬用外」の文字を付け、次の色で表示します。

  • 毒物:赤地に白色で「毒物」
  • 劇物:白地に赤色で「劇物」

「医療用外」と書く例を見かけますが、法律の文言は「医薬用外」です。

販売・授与するときは、容器と被包に次の事項も必要です(第12条第2項)。

  1. 毒物劇物の名称
  2. 成分とその含量
  3. 有機燐化合物とその製剤の場合は解毒剤の名称(PAMの製剤と硫酸アトロピンの製剤。施行規則第11条の5)
  4. 取扱いと使用上特に必要な事項として省令で定めるもの

4番目の事項は施行規則第11条の6で決まっています。製造業者と輸入業者は、氏名と住所(法人なら名称と主たる事務所の所在地)を書きます。販売業者が直接の容器を開けて小分けするときは、氏名と住所に加えて毒物劇物取扱責任者の氏名も必要です。塩化水素や硫酸を含む液体の住宅用洗浄剤などには、別に注意書きの定めがあります。

貯蔵場所と陳列場所にも、「医薬用外」と「毒物」または「劇物」の文字を表示します(第12条第3項)。こちらは色の指定がありません。色の決まりは容器と被包だけです。厚生労働省は、毒劇法ではGHS表示は義務ではないが使用を推奨する、としています(厚生労働省)。他の法律でGHSラベルが必要になるかは、別に確認してください。

販売・授与するときは、遅くとも渡す時までに、性状と取扱いの情報を譲受人に提供しなければなりません(施行令第40条の9)。毒劇法上の情報提供(SDSの交付)です。内容が変わったら、速やかに新しい情報を渡すよう努めます。

譲渡の記録と交付の制限

他の毒物劇物営業者に販売・授与するたびに、名称と数量、販売・授与の年月日、譲受人の氏名・職業・住所を書面に記録します(第14条)。法人の場合は名称と主たる事務所の所在地を記録します。営業者でない人への販売・授与では、同じ事項を書いた書面(譲受書)を先に受け取ります。書面は販売・授与の日から5年間保存します。承諾を得て電磁的方法を使う手続もあります。2025年11月1日からは、譲受書は押印でも署名でもよくなりました(施行規則第12条の2、厚生労働省通知 医薬発1029第1号)。

18歳未満の人、一定の心身の障害がある人、麻薬・大麻・あへん・覚せい剤の中毒者には交付できません(第15条第1項)。第3条の4の物質(ナトリウム、ピクリン酸など)を渡すときは、相手の氏名と住所を確認して帳簿に書き、最終の記載日から5年間保存します(第15条)。

保管と管理

第11条は管理の基本を決めています。

  • 盗難と紛失を防ぐ措置をとる
  • 施設の外へ飛散したり、漏れたり、地下にしみ込んだりしないようにする
  • 飲食物の容器として通常使う物を、容器に使わない

最後のルールは、毒物とすべての劇物が対象です(施行規則第11条の4)。飲料用ペットボトルへの小分けは違反になります。

漏洩防止の対象には、劇物そのものでない液体も入ります(施行令第38条)。無機シアン化合物たる毒物を含有する液体(シアン含有量が1リットルにつき1ミリグラム以下のものを除く)と、塩化水素・硝酸・硫酸・水酸化カリウム・水酸化ナトリウムを含む液体です。後者は、水で10倍に薄めたときのpHが2.0から12.0までのものを除きます。対象に残るのは、10倍に薄めたあとのpHが2.0未満または12.0を超える液体です。

登録のない事業者にもかかる義務

登録を受けていない工場や研究所でも、業務で毒物劇物を扱えば第11条(保管)、第12条第1項と第3項(表示)、第17条(事故届)、第18条(立入検査)が適用されます(第22条第5項)。施行規則第18条の2は、この対象を「すべての毒物及び劇物」としています。

指定された毒物劇物を扱う電気めっき、金属熱処理、しろあり防除、一定の運送事業には届出義務があります。該当する事業者は、事業場ごとに30日以内に届け出ます(第22条第1項、施行令第41条・第42条)。電気めっきと金属熱処理は無機シアン化合物たる毒物とその製剤、しろあり防除は砒素化合物たる毒物とその製剤が対象です。運送は、最大積載量5,000キログラム以上の自動車(被牽引自動車を含む)に固定した容器を使う場合と、省令で定める内容積以上の容器をその自動車に積む場合で、対象物は施行令別表第二の物です。届出をした事業者は、毒物劇物取扱責任者も置かなければなりません(第22条第4項)。

廃棄の基準

毒物劇物と施行令第38条の物は、政令の技術上の基準に従わなければ廃棄できません(第15条の2)。施行令第40条は次の方法を定めています。

  1. 中和、加水分解、酸化、還元、稀釈などで、毒物劇物にも第38条の物にも当たらない物にする
  2. ガス体や揮発性の物は、危害のおそれがない場所で少量ずつ放出または揮発させる
  3. 可燃性の物は、危害のおそれがない場所で少量ずつ燃焼させる
  4. 1から3が難しい場合は、地下1メートル以上で地下水を汚染するおそれがない地中に確実に埋めるなどの方法をとる

希釈を使う場合も、処理後の物が毒物劇物にも第38条の物にも該当しないことが必要です。この基準を満たすだけで、排水や地中への処分が自由にできるわけではありません。基準に反した廃棄で不特定または多数の人に危害のおそれがあるときは、知事(保健所設置市・特別区では市長・区長)が回収や毒性の除去を命じることができます(第15条の3)。廃棄物処理法や下水道法の扱いも、あわせて確認してください。

運搬と事故時の届出

四アルキル鉛以外の毒物と劇物を車両や鉄道で運ぶときは、容器または被包に入れて密封します。1回につき1,000キログラム以上なら、外側に名称と成分を表示します(施行令第40条の3)。施行令別表第二の毒物劇物を、車両で1回5,000キログラム以上運ぶときは、標識、2人分以上の保護具、名称・成分・含量と応急措置を書いた書面が必要です(施行令第40条の5)。省令で定める時間を超えて運転するときは、交替運転者も必要です。標識は0.3メートル四方の黒地の板に白字で「毒」と書き、車両の前後に掲げます(施行規則第13条の5)。車両や鉄道での運搬を委託するときは、荷送人が名称・成分・含量・数量と応急措置の書面を事前に渡します。省令で定める少量の場合は除外されます(施行令第40条の6)。

漏洩などで不特定または多数の人に危害のおそれがあるときは、直ちに保健所、警察署または消防機関に届け出て、応急の措置をとります(第17条第1項)。盗難や紛失は直ちに警察署へ届け出ます。古い解説書では第16条の2になっていますが、現在は第17条です。

立入検査と罰則

都道府県知事は報告を求め、指定した薬事監視員に製造所や店舗、研究所などを立入検査させることができます(第18条)。違反があれば、設備の改善命令、取扱責任者の変更命令、登録の取消しや業務停止もあります(第19条)。

無登録営業、表示違反、譲渡記録の違反、廃棄基準違反などは、3年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金で、両方が科されることもあります(第24条)。事故の届出や第22条の届出を怠った場合は30万円以下の罰金です(第25条)。

施行令と毒劇法の改正

法律本体の最新の改正は、2025年6月1日施行の拘禁刑への切替えです(令和4年法律第68号、改正履歴)。2026年10月時点で、公布済みで未施行の改正はありません。実務に効く最近の変更は次のとおりです。

2026年9月10日の令和8年度第1回毒物劇物調査会では、劇物への指定2物質、除外2物質、毒物および劇物の指定と除外1件が審議され、施行規則の改正省令案も報告されました。この議事要旨には物質名と施行日の記載がありません。厚生労働省の通知一覧とパブリックコメントを見ておくと、指定令の改正に早く気づけます。特定の物質がどの区分に入り、どの義務がかかるかは、RegAffairs AIの回答ページのように、条文の出典付きで確認できます。