Q.01

ポジティブリストの適合証明書って法律で義務なの?

一部は法律上の義務です。ただし、食品衛生法が求めているのは「説明」で、「適合証明書」という特定の書類ではありません。 どこまでが義務かは、サプライチェーン上の立場によって違います。器具・容器包装を販売する者、または販売目的で製造・輸入する者は、販売先への説明が義務です(第53条第1項)。樹脂などの原材料を供給する者は、容器包装メーカーから確認を求められたときに説明する努力義務にとどまります(第53条第2項)[1]。

根拠条文(食品衛生法)

  • 第53条第1項(義務):対象は、第18条第3項の政令で定める材質の原材料を使った器具・容器包装を販売する者、または販売目的で製造・輸入する者です。厚生労働省令の定めに従い、販売の相手方に次のどちらかに該当する旨を「説明しなければならない」とされています[1]。
    • (i) その材質について、規格(ポジティブリスト)に適合した原材料だけを使っている
    • (ii) 第18条第3項ただし書の加工がされている(食品に接触しない部分に使い、溶出・浸出が一定量を超えないもの)
  • 第53条第2項(努力義務):対象は、その材質の原材料を販売する者、または販売目的で製造・輸入する者です。容器包装を製造する者から規格適合の確認を求められた場合に、必要な説明をするよう「努めなければならない」とされています[1]。
  • 違反時の処分:第53条第1項の違反は営業禁止・停止などの処分対象になります。輸入業者については、厚生労働大臣が営業の全部または一部を禁止または停止できると明記されています[2]。

関連する前提

  • ポジティブリストに載っていない物質は、原則として使用できません(第18条第3項)[3]。厚生労働省の改正概要資料では、対象は合成樹脂とされています。同じ資料は、原材料メーカーから容器メーカー、販売業者、食品事業者へと「ポジティブリストへの適合を確認できる情報」を伝えていく仕組みとして制度を図示しています[4]。
  • 器具・容器包装の製造業者は、製造管理基準(GMP)に従って必要な措置をとる義務があります(第52条第2項)。合成樹脂など政令指定材質を使わない製造業者は、一般衛生管理(第52条第1項第1号)に限られます[5]。
  • 容器包装を受け取る食品事業者には、原材料の安全性確保などに努める一般的な努力義務があります(第3条第1項)[6]。

実務上のポイント

法律が求めているのは適合していることの「説明」です。その方法は厚生労働省令に委ねられています。法律の条文には、「証明書」という特定の様式を義務づける規定は見当たりませんでした。取引先が証明書の形式で求めるのは、この説明義務と努力義務を書面で果たすための商慣行と考えられます。

Approach: 食品衛生法の英訳(2018年法律第46号による改正後、暫定訳)と、厚生労働省の改正概要資料を確認しました。説明の具体的な方法を定める厚生労働省令(施行規則)の条文は、今回確認できた資料には含まれていません。

ご希望であれば、次に施行規則で定める説明の方法を厚生労働省の公式ページで確認できます。

Q.02

誰が誰に出すものですか?

情報は「売り手から買い手へ」、サプライチェーンを川下へ流れます。 食品衛生法の第53条で決まっているのは次の2つです。

  • 器具・容器包装を販売する者(販売目的で製造・輸入する者を含む)が、その販売の相手方に説明する。これは義務です(第1項)。
  • 樹脂などの原材料を販売する者(販売目的で製造・輸入する者を含む)が、その原材料で器具・容器包装を製造する者から求められたときに説明する。これは努力義務です(第2項)[1]。

段階ごとの整理

出す側受け取る側法的性格根拠
原材料(合成樹脂など)の製造・輸入・販売者器具・容器包装の製造者確認を求められた場合の努力義務第53条第2項
器具・容器包装の製造・輸入者販売の相手方(販売業者や食品事業者など)義務第53条第1項
器具・容器包装の販売業者販売の相手方(食品事業者など)義務第53条第1項

[1]

  • 第1項の義務は、製造業者だけでなく輸入業者や販売業者にもかかります。誰であっても、売る段階で売り先に説明する必要があります。

  • 説明の内容は、次のどちらかに当たることです。

    • ポジティブリストの規格に適合した原材料だけを使っている
    • 第18条第3項ただし書の加工がされている(食品に接触しない部分に使い、溶出・浸出が一定量を超えないもの)

    説明の方法は厚生労働省令に委ねられています[1]。

  • 厚生労働省の改正概要資料では、流れを次の順に図示しています。原材料メーカー、容器等製造事業者、容器等販売事業者、食品製造・販売事業者(容器等の使用者)、消費者です。原材料メーカーから容器製造者への段階は「求めに応じて」適合確認情報を提供するものとされています。それより下流の段階では、「ポジティブリストへの適合を確認できる情報の提供」が行われる構図です。対象は合成樹脂です[4]。

注意点

  • 法律上の説明義務は、食品事業者に器具・容器包装を売る段階で終わります。食品事業者から消費者へ説明する義務は、第53条には規定されていません。
  • 食品事業者は「受け取る側」です。ただし第3条第1項により、原材料の安全性確保に努める一般的な努力義務を負います[6]。そのため、仕入先に適合情報を求めるのが実務上の通例になっています。

Approach: 食品衛生法第53条(日英対訳、暫定訳)と、厚生労働省のポジティブリスト制度改正概要資料を確認しました。説明の具体的な方法を定める施行規則の条文は、今回の資料には含まれていません。

Q.03

書き方や雛形はありますか?

国が定めた公式の雛形や記載様式はありません。 厚生労働省は、説明の方法を「特段定めない」としています。そのうえで、仕様書、品質保証書、業界団体の確認証明書などを使ってよいという考え方を示しています(厚生労働省 ポジティブリスト制度Q&A 問18)。現在この制度を所管している消費者庁の最新Q&A(令和8年6月5日付け事務連絡)を見ても、目次に情報伝達の様式や記載例を扱う問はありませんでした(消費者庁 Q&A)。

国が示している書き方のルール

厚生労働省のQ&A 問18は、「食品衛生法等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政省令の制定について」(令和元年11月7日付け生食発1107第1号)の内容として、次の点を挙げています(出典)。

  • 伝える内容:ポジティブリストに適合しているかどうかを確認するのに役立つ情報です。個々の物質(配合成分)まで開示する必要はありません。
  • 伝える方法:特に決まりはありません。ただし、記録や保存によって、後から確認できるようにしておく必要があります。
  • 使える書類の例:
    • 契約時の仕様書など
    • 入荷時の品質保証書など
    • 業界団体の確認証明書
    • そのほか、第18条第3項への適合を裏付ける書類
  • 対象:合成樹脂製の器具・容器包装と、食品に触れる面に合成樹脂の層がある他材質の器具・容器包装です。これらを販売・製造・輸入する者が、販売の相手方に伝える情報が対象になります。Q&Aでは、この情報伝達は施行規則第66条の6で定めるものとされています。

記載に盛り込む要素(法令の要件から組み立てた参考例で、公式の様式ではありません)

第53条第1項で説明が求められているのは、次のどちらに当たるかです。

  1. ポジティブリストの規格に適合した原材料だけを使っている
  2. 第18条第3項ただし書の加工がされている(食品に触れない層に使われ、一定量を超えて食品に移らないもの)

[1]

これを踏まえると、書面には次の項目を入れるのが筋です。

項目記載の考え方
発行者・宛先・日付誰が誰に出したかを後から確認できるようにするため
対象製品(品名・品番など)どの製品についての説明かを特定するため
適合区分上の1か2のどちらか(多層品なら層ごとに書くこともある)
使用条件ポジティブリストでは、基ポリマーごとに使える食品と最高使用温度が決まっています(厚生労働省 制度説明資料 p.26)。そのため、使える食品の種類や温度帯を書いておくと、受け取った側が確認できます
根拠食品衛生法第18条第3項、第53条、告示第370号別表第1

非開示の扱い:配合成分そのものは書かなくてかまいません(上記Q&A 問18)。

経過措置品の書き方

施行前(令和2年6月1日より前)から使われていた物質を、それまでの使用範囲内で使っている「同様のもの」は、別表第1に載っているものとみなされます。この場合は、その旨を確認できる説明をすることで、適合を説明できるとされています(厚生労働省 Q&A 問18)。この扱いは、令和7年6月1日以降も続くとされています(消費者庁 Q&A 問43)。

Approach: 食品衛生法第53条の条文と、厚生労働省・消費者庁の公式資料(ポジティブリスト制度Q&A、制度説明資料、消費者庁の制度ページ)を確認しました。業界団体が作っている確認証明書の書式は、今回確認していません。

ご希望であれば、消費者庁の制度ページに載っている「器具・容器包装製造者における製造管理のための手引き」で、情報伝達の記録・保存についてどう書かれているかを次に確認できます。

Sources:

Q.04