Q.01

医薬品の副作用はどうやってPMDAに報告するの?

報告ルートは報告者によって3つに分かれます。製造販売業者には法律上の報告義務があり、期限も決まっています。医師・薬剤師などの医薬関係者は、必要と判断したときに報告する義務があります。患者本人・家族は任意で報告できます。薬機法の条文上の報告先は厚生労働大臣ですが、法第68条の13第3項と施行令第64条の2により、医薬品の副作用報告は実際にはPMDA(機構)に提出します。

Approach: 薬機法・同法施行令・施行規則の現行条文を確認し、報告の窓口と方法はPMDAの公式ウェブサイトで確認しました。企業報告で使う通知類(E2B(R3)実装ガイド対応通知など)の本文までは読んでいません。

1. 報告先がPMDAになる法的な仕組み

  • 製造販売業者による報告(法第68条の10第1項)と、医薬関係者による報告(同条第2項)は、条文上は「厚生労働大臣に報告」と定められています [1]。
  • ただし、大臣が機構に情報の整理を行わせることにした品目については、法第68条の13第3項により、報告は機構(PMDA)宛てにしなければなりません [2]。施行令第64条の2は、この対象に第68条の10第1項・第2項の報告に係る医薬品を含めています(動物専用品は除外)[3]。
  • 施行規則第228条の23は、機構への報告に第228条の20(報告の期限)を読み替えて準用しています [4]。

2. 製造販売業者(MAH)・外国特例承認取得者:義務・期限あり

施行規則第228条の20第1項による医薬品の報告期限は次のとおりです [5]。

期限主な対象
15日自社品の副作用が疑われる死亡
15日外国医薬品の副作用が疑われる死亡で、使用上の注意から予測できないもの(予測できても、発生傾向が予測できない、または傾向の変化が危害拡大のおそれを示すものを含む)
15日重篤症例(障害、死亡・障害につながるおそれ、入院・入院期間延長、これらに準じる重篤、後世代の先天異常)で未知のもの、または既知でも発生傾向が予測できないもの・傾向の変化が危害拡大のおそれを示すもの
15日新有効成分として承認後2年以内の品目の重篤症例(既知・未知を問わない)、市販直後調査で得た重篤症例
15日未知の感染症症例、感染症による死亡・重篤症例、外国での販売中止・回収などの措置
30日上記以外の既知の重篤症例
30日がんなど重大な疾病のおそれ、発生傾向の著しい変化、効能・効果がないことを示す研究報告
定期報告非重篤で未知の症例。新医薬品などは第63条第3項の期間ごと、それ以外は承認日などから1年以内ごとに、期間満了後2か月以内
  • 提出方法: PMDAは、製造販売業者からの副作用等報告を電子報告、CD等による報告、メールまたは紙による報告で受け付けています。最新の通知ではE2B(R3)実装ガイドに対応した様式が求められ、電子報告の利用が推奨されています。問い合わせ先は情報管理課(03-3506-9482)です(PMDA:医薬品・医薬部外品・化粧品)。
  • 製造販売業者は、法令遵守体制の一部として、第68条の10第1項の副作用等報告が適時かつ適切に行われるよう情報管理などの措置を講じる必要があります(施行規則第98条の9)[6]。
  • 治験中の副作用は別の枠組みです。施行規則第273条の期限(予測できない死亡などは7日、重篤なものは15日、年次報告など)が適用され、第279条により機構宛てに読み替えて準用されます [7][8]。

3. 医薬関係者(医師、歯科医師、薬剤師、登録販売者、薬局・病院・診療所の開設者など)

  • 報告義務の内容: 副作用が疑われる疾病・障害・死亡や感染症の発生を知った場合に、保健衛生上の危害の発生・拡大を防ぐために必要と認めるときは報告しなければなりません(法第68条の10第2項)[1]。
  • オンライン報告: PMDAの報告受付サイトから報告できます。初回は利用者登録(専用のIDとパスワード)が必要で、PMDAメディナビとは別のシステムです。予防接種法に基づく副反応疑い報告もこのサイトから提出できます(PMDA:医薬関係者からの報告)。
  • オンライン以外の報告: PMDAの様式一括ダウンロードページにある医療機関用の報告様式を使い、次のいずれかで送ります(PMDA:オンライン報告以外の報告)。
    • 郵送:〒100-0013 東京都千代田区霞が関3-3-2 新霞が関ビル
    • FAX:0120-395-390
    • メール:anzensei-hokoku@pmda.go.jp(本文と添付ファイルの合計10MBまで)
    • 予防接種後の副反応報告はFAX(0120-176-146)のみの受付です。
  • 健康食品による被害は保健所へ、医療事故やヒヤリ・ハット事例は日本医療機能評価機構へ報告します。いずれもこの制度の対象外です。

4. 患者・家族(任意)

  • PMDAのウェブサイトからオンラインで報告できます。入力は約40項目で、所要時間は約30分です。受領確認が届くメールアドレスが必要です。オンラインでの報告が難しい場合は郵送も受け付けています(PMDA:患者の皆様からの医薬品副作用報告)。
  • PMDAは報告者への助言や、調査結果の連絡は行いません。また、この報告は医薬品副作用被害救済制度の救済給付の請求とは別の手続きです(同ページ)。

ご関心が企業側の報告であれば、E2B(R3)対応の通知の本文を読み、報告すべき項目と記載方法を整理することもできます。

Q.02

製薬会社の報告期限は?

医薬品の製造販売業者(外国特例承認取得者を含む)の副作用等報告の期限は、施行規則第228条の20第1項で決まっています。区分は3つで、**15日以内、30日以内、定期報告(期間満了後2か月以内)**です。期限は、該当する事項を「知つたとき」から数えます [5]。条文上の報告先は厚生労働大臣ですが、第228条の23で「機構」と読み替えるため、実際にはPMDAに提出します [4]。

Approach: 薬機法施行規則の現行条文(第228条の20、第63条、第273条ほか)を確認しました。E2B(R3)対応通知など、運用を定めた通知類の本文は読んでいません。

市販後の副作用等報告(施行規則第228条の20第1項)

期限対象(条文の号・項目)
15日第1号イ:自社品の副作用が疑われる死亡
15日第1号ロ:外国医薬品の副作用が疑われる死亡で、使用上の注意から予測できないもの。予測できても、発生傾向が予測できないもの、または傾向の変化が危害の発生・拡大のおそれを示すものを含む
15日第1号ハ:自社品または外国医薬品による重篤症例(障害、死亡・障害につながるおそれ、入院・入院期間の延長、これらに準じる重篤、後世代の先天異常)のうち、未知のもの。既知でも発生傾向が予測できないもの、傾向の変化が危害拡大のおそれを示すものを含む
15日第1号ニ:新有効成分医薬品で承認後2年以内の品目の重篤症例。既知・未知を問いません
15日第1号ホ:市販直後調査で得た重篤症例
15日第1号ヘ・ト:未知の感染症症例、自社品または外国医薬品による感染症の死亡・重篤症例
15日第1号チ:外国医薬品の製造・輸入・販売の中止、回収、廃棄などの措置の実施
30日第2号イ:上記以外の重篤症例(主に既知の重篤症例)
30日第2号ロ:研究報告。がんなど重大な疾病・障害・死亡のおそれ、発生傾向の著しい変化、承認された効能・効果がないことを示すもの
定期第3号:非重篤で未知の症例。新医薬品と大臣の指示した医薬品は第63条第3項の期間ごと、それ以外は承認日などから1年以内ごと。いずれも期間満了後2か月以内に報告

出典はいずれも [5] です。

  • 第3号で参照されている第63条第3項の期間は、承認時に大臣が指定した日から数えて最初の2年間は半年以内ごと、その後は1年以内ごとです(大臣が指示した医薬品は、指示された期間)[9]。

関連する別の報告期限

  • 安全性定期報告(再審査対象の医療用医薬品、第63条第3項):上記と同じ間隔ごとに、期間満了後70日以内に報告します。調査資料が邦文以外の場合は3か月以内です [9]。
  • 条件・期限付き承認(緊急承認)品目(第53条の14第3項):大臣が指定した日から半年ごとに、期間満了後70日以内(邦文以外の資料は3か月以内)に報告します [10]。
  • 治験中の副作用等(第273条)[7]
    • 予測できない死亡、または死亡につながるおそれのある症例:7日
    • 予測できないその他の重篤症例、既知の死亡など、外国での措置、研究報告:15日
    • 発現症例一覧等:初回の治験計画届出日などから1年ごとに、期間満了後2か月以内
    • 第279条により、報告先はPMDAに読み替えられます [8]。
  • 機械器具と一体の医薬品(コンビネーション製品):機械器具部分の不具合は、医療機器の報告期限(第228条の20第2項)を準用します(同条第3項)[5]。

ご希望があれば、医療機器、再生医療等製品、医薬部外品・化粧品の報告期限(同条第2項、第4項、第5項)も同じ形で表にまとめます。

Q.03

有害事象と副作用の違いは?

違いは、医薬品との因果関係を問うかどうかです。有害事象は、医薬品を投与された人に起きた好ましくない医療上の出来事すべてを指し、因果関係の有無は問いません。副作用は、そのうち医薬品との因果関係が否定できないもの(少なくとも合理的な可能性があるもの)です。つまり、副作用は有害事象の一部です。

Approach: 薬機法・同法施行令・施行規則の条文を確認しましたが、「有害事象」という用語は出てきません。このため、定義はPMDAに掲載されているICH E2A(治験)とICH E2D(市販後)の通知本文で確認しました。

定義(ICH E2A/E2Dの日本語通知)

有害事象(Adverse Event)副作用(Adverse Drug Reaction)
定義医薬品を投与された患者・被験者に生じた、あらゆる好ましくない医療上のできごと医薬品に対する反応のうち、有害で意図しないもの(投与量は問わない)
因果関係問わない。医薬品の使用と時間的に関連する、好ましくない・意図しない徴候(臨床検査値の異常を含む)、症状、疾病のすべて必要。有害事象のうち、当該医薬品との因果関係が否定できないもの
例治験中の交通事故による骨折、プラセボ群で起きた事象なども含む医薬品との関連が疑われる発疹、肝障害など

出典は、治験の定義が薬審第227号(平成7年3月20日、ICH E2A)、市販後の定義が薬食安発0328007号(平成17年3月28日、ICH E2D)の2.1・2.2です。

実務上のポイント

  • 自発報告は副作用として扱う: ICH E2Dによると、自発的に報告された有害事象は、報告者が因果関係を不明としていても、明記していなくても、規制当局への報告上は副作用の定義を満たします(薬食安発0328007号 2.2)。
  • 治験では因果関係の評価が必要: 治験担当医師または治験依頼者が因果関係を示唆すると判断したものは、すべて副作用とみなします。「因果関係があるらしい」「疑われる」「否定できない」といった表現は、因果関係を示唆するものと扱います。一方、因果関係が否定された重篤な事象は、予測できるかどうかにかかわらず緊急報告の対象外です(薬審第227号 3.1))。
  • プラセボ群の事象: 通常は「副作用」の要件を満たさないため、緊急報告は不要です(同 3.5))。
  • 「重篤」は両方にかかる: 「重篤な有害事象又は副作用」の基準は共通で、死亡、生命を脅かすもの、入院または入院期間の延長、永続的または顕著な障害、先天異常、その他医学的に重要な事象です。なお、「重篤(serious)」と「重症(severe)」は別の概念です。「重症」は事象の強さを、「重篤」は転帰や処置を基準にした規制上の区分を表します(同 2.2)、薬食安発0328007号 2.3)。

薬機法との関係

法令上の報告義務は「有害事象」ではなく、**「副作用によるものと疑われる」**疾病・障害・死亡などについて定められています(法第68条の10)[1]。前回お示しした施行規則第228条の20の15日・30日報告も、同じく副作用が疑われる症例を対象としています [5]。つまり、収集の段階では有害事象を幅広く集め、そのうち因果関係が否定できないものが報告対象になる、という関係です。

ご希望があれば、「予測できない(未知の)副作用」の判断基準(治験は治験薬概要書、市販後は添付文書が基準)も整理します。

Q.04

副反応とは何が違うの?

副反応は、ワクチン(予防接種)による副作用を指す、予防接種法の用語です。考え方は副作用と同じで、因果関係が否定できない有害な反応を指します。違いは対象(予防接種かどうか)と根拠法です。医薬品一般は薬機法上「副作用」と呼び、予防接種法は定期・臨時の予防接種の後に起きた「接種によるものと疑われる症状」を「副反応疑い」として、別の報告制度で集めています。

Approach: 薬機法・同法施行令・施行規則の条文を確認しましたが、「副反応」という語は出てきませんでした。予防接種法の条文はe-Gov法令検索、報告制度の運用はPMDAの公式ページで確認しました。

3つの用語の位置づけ

有害事象副作用副反応(副反応疑い)
対象医薬品の投与後に起きた好ましくない出来事すべて医薬品全般予防接種(ワクチン)
因果関係問わない否定できないもの「接種によるものと疑われる」もの
根拠となる枠組みICH E2A/E2D薬機法 第68条の10予防接種法 第12条

「副作用が疑われる」と「副反応が疑われる」は、医薬品とワクチンで呼び方が違うだけで、どちらも疑い例の段階で報告します。そのため、前回の整理のとおり、有害事象の中に「副作用」があり、ワクチンではそれを「副反応」と呼ぶ、という関係で捉えておけば実務上は問題ありません。

予防接種法での扱い

  • 報告義務(第12条第1項): 病院・診療所の開設者または医師は、定期の予防接種等を受けた者が「当該定期の予防接種等を受けたことによるものと疑われる症状として厚生労働省令で定めるもの」を呈していると知ったときは、厚生労働大臣に報告しなければなりません。大臣は、その内容を接種を行った市町村長または都道府県知事に通知します(同条第2項)(e-Gov 予防接種法 第12条)。
  • 報告先はPMDA(第14条第3項): 大臣が機構に情報の整理を行わせることとしたときは、第12条第1項の報告は機構に提出します(e-Gov 予防接種法 第14条)。これは薬機法第68条の13第3項と同じ仕組みです。
  • 因果関係が不明でも報告対象: PMDAは、症状と予防接種の因果関係が必ずしも明らかでない場合でも報告対象になり得ると説明しています(PMDA:予防接種法に関する報告の制度について)。

薬機法の副作用報告との関係(実務)

  • 二重報告は不要: 予防接種法に基づく副反応疑い報告は、薬機法に基づく報告としても扱われます。このため、医療機関が重ねて薬機法の報告をする必要はありません(同PMDAページ)。
  • 任意接種は薬機法の枠組み: 予防接種法の対象外である任意接種による健康被害は、保健衛生上の危害の発生・拡大を防ぐために必要と認めるときに報告します(同PMDAページ)。つまり、医薬関係者の副作用報告(薬機法第68条の10第2項)として扱われます [1]。
  • 企業側は「副作用」: ワクチンの製造販売業者が行う報告は、他の医薬品と同じく薬機法第68条の10第1項の副作用等報告であり、期限は施行規則第228条の20に従います [5]。

救済制度も別になる

定期の予防接種等による疾病・障害・死亡は、予防接種法第15条に基づき、厚生労働大臣が接種によるものと認定したときに市町村長が給付します。認定にあたっては審議会等の意見を聴きます(e-Gov 予防接種法 第15条)。PMDAの医薬品副作用被害救済制度とは別の制度です。

ご希望があれば、第12条第1項にいう「厚生労働省令で定める」症状と、接種後の報告期間の一覧(予防接種法施行規則)を確認します。

Q.05