日本の遺伝子組み換え表示基準
日本の遺伝子組み換え表示はどう決めればいい?
日本の遺伝子組換え(GM)表示は、食品表示基準(平成27年内閣府令第10号)[1]で決まります。判断の軸は3つです。①その原材料が9つの対象農産物か、②製品が別表第17の33食品群に入るか、そして当該原材料が「主な原材料」に当たるか、③分別生産流通管理(IPハンドリング)の証明があるか。下の順にたどれば、表示文言は一つに決まります。
Approach: 消費者庁の食品表示基準Q&A「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」、制度改正の説明会資料、一般向けリーフレット、ゲノム編集技術応用食品Q&A、厚生労働省の安全性審査済み遺伝子組換え食品リストを確認しました。食品表示基準の条文そのもの(別表第16〜18)は開いておらず、内容はQ&Aでの引用によります。
判断の手順
Step 1:対象農産物か
- 対象は大豆(枝豆・大豆もやしを含む)、とうもろこし、ばれいしょ、なたね、綿実、アルファルファ、てん菜、パパイヤ、からしなの9農産物です[2]。スイートコーンも「とうもろこし」として対象です(Q&A GM-16, p.15)。
- 米・小麦など対象外の農産物には「遺伝子組換えでない」「遺伝子組換え○○を使用していません」と表示できません。食品表示基準第9条の表示禁止事項に当たります。「現在のところ小麦や米は遺伝子組換えのものは流通していません」という一般的な説明なら可能です(GM-60, p.46)。
- 添加物には遺伝子組換え表示の義務はありません(GM-3, p.6)。
Step 2:組成・栄養価が著しく異なる品種(別表第18)か
- ステアリドン酸産生大豆、高リシンとうもろこし、EPA・DHA産生なたねがこれに当たります。油など通常は表示義務のない品目でも、「大豆(ステアリドン酸産生遺伝子組換え)」等の表示が義務です。ただし、その形質がなくなったもの(脱脂大豆など)は除きます[3]。
- EPA・DHA産生なたねは2つの形質を併記します(例:「EPA、DHA産生遺伝子組換え」)[4]。
- 高オレイン酸GM大豆は令和4年3月に別表第18から外れました。ただし別表第17の食品であれば、通常の「遺伝子組換え」表示の対象です[5]。
Step 3:製品が別表第17の33食品群に入るか
- 33食品群は、組換えDNA等が残存し科学的検証が可能と判断された品目です(豆腐、納豆、みそ、豆乳、コーンスナック、コーンスターチ、ポップコーン、ポテトスナック、ばれいしょでん粉など)[2]。
- しょうゆ、大豆油、コーンフレーク、水飴、異性化液糖、デキストリン、コーン油、菜種油、綿実油、てん菜糖、およびこれらを主な原材料とする食品は表示不要です。任意で表示する場合は、義務表示と同じルールに従います[3]。
- ビールや蒸留酒は義務の対象外です。ただし、発酵・蒸留後にGM原料を主な原材料として混和した酒類は対象になります(GM-15, p.15)。
Step 4:「主な原材料」か
- 主な原材料とは、重量順で上位3位以内で、かつ原材料および添加物の重量の5%以上を占めるものです。製造時に加えた水は原材料に換算しません[3]。
- コロッケのように衣とフライ種を区分して表示する場合も、判断は全原材料に占める重量で行います(GM-17, p.16)。複合原材料も同じ考え方です[6]。
- 容器包装の表示可能面積がおおむね30cm²以下なら省略できます(GM-18, p.16)。
Step 5:IP証明の状況で文言を決める
| 原料の状況 | 表示 | 区分 |
|---|---|---|
| 分別管理された遺伝子組換え農産物 | 「大豆(遺伝子組換え)」 | 義務 |
| 分別していない、またはIP証明がない | 「大豆(遺伝子組換え不分別)」 | 義務 |
| IPあり、意図せざる混入が5%以下(大豆・とうもろこし) | 原材料名のみ、または「大豆(遺伝子組換え混入防止管理済)」「分別生産流通管理済み」等 | 任意 |
| IPあり、かつ混入がないと認められる | 「大豆(遺伝子組換えでない)」「非遺伝子組換え」等 | 任意 |
押さえるべき要件
- 5%の意味: 5%以下の意図せざる混入が認められるのは、大豆ととうもろこしで、IPが適切に行われた場合に限ります。IPを確認していないのに結果として5%以下だった場合や、意図的に混入した場合は、「不分別」と表示しなければなりません。「管理済」と表示すれば不適正表示です(GM-2, p.5)[8]。大豆・とうもろこし以外の対象農産物には混入率の定めがありません。それらに「遺伝子組換えでない」と表示するには、混入が認められないことが条件です[9]。
- 2023年4月1日施行の任意表示の厳格化: 混入5%以下の原料にも使えた従来の「遺伝子組換えでない」表示は、「分別生産流通管理済」系の表示に切り替わりました。施行後に使う容器包装は、改正後の基準に沿って表示する必要があります[9][10]。
- 「遺伝子組換えでない」の根拠: 第三者分析は必須条件ではありません。根拠としては、専用コンテナで輸送し製造者が初めて開封したことの証明、非商業栽培国産であることの確認、「GM不含」と記載したIP証明書などが有用とされています。ただし、行政の検証でGMが検出されれば不適正表示になります[11]。
- IP証明書の扱い: 原料を使う前までに入手して内容を確認し、発行者・受領者の双方が2年以上保存します。電子媒体でも改ざんのおそれがなければ可能です(GM-49/50, p.33)。
- 産地別のIP: 北米以外の産地でもGMの商業栽培があればIPが必要です。非商業栽培国であれば、日本の港に入った段階以降から管理します[12]。
- 表記の作法:
- 「植物油」「でん粉」のように元の農産物が分からない名称では、「植物油(大豆(遺伝子組換え))」のように対象農産物を明示します[13]。
- 一括表示欄に「GMO」「non-GM」は使えません[14]。
- 「遺伝子組換えでないものを分別」「ほぼ含まれていません」のような表現は避けるべき、または不適正とされています(GM-37, p.20)。
- 製品全体への強調表示: 「遺伝子組換え原料不使用」と製品全体を強調するには、副原料や油を含む全ての原材料がIP済みで、混入がない必要があります(GM-44, p.26)。
- 畜産物: 「遺伝子組換えでない牛乳(卵)」は表示できません。飼料に関する表示は、一括表示欄外であれば誤認を招かない形で可能です[4]。
- ゲノム編集食品:
- 安全性審査: 表示の前提として、使うイベントが厚生労働省の安全性審査済みリストに載っている必要があります(例:パパイヤ55-1)。
具体的な製品の配合表(原材料と重量比、原産国、IP証明の有無)をいただければ、上の手順に当てはめて表示案を作成します。
遺伝子組換えでないと表示できる条件は?
「遺伝子組換えでない」と表示できるのは、対象農産物(別表第17に掲げる農産物)について適切に分別生産流通管理(IP)を行い、そのうえで遺伝子組換え農産物の混入がないと認められる場合だけです[11]。2023年4月1日施行の改正で、混入5%以下(大豆・とうもろこし)の原料は「遺伝子組換えでない」ではなく「分別生産流通管理済」系の表示に切り替わりました。表示自体は任意ですが、表示する場合は食品表示基準第3条第2項の規定に従う必要があります[9][17]。
Approach: 消費者庁の食品表示基準Q&A「別添 遺伝子組換え食品に関する事項」、新制度の説明会資料、一般向けリーフレットを確認しました。食品表示基準の条文そのものは開いておらず、内容はこれらの資料での説明によります。
表示できる条件
- 対象農産物であること。 別表第17に掲げる農産物以外の農産物と、それを原材料とする加工食品については、「遺伝子組換えでない」旨の表示が禁止されています[17]。
- IPが適切に行われていること。 これが前提です[18]。IPとは、GM農産物と非GM農産物を生産・流通・加工の各段階で分別管理し、それを証明書類で明確にする管理方法です[19]。
- GMの混入がないこと。
混入がないことの確認方法(GM-40)
第三者機関による分析は有効な確認方法の一つですが、任意表示の必須条件ではありません。有用な確認方法として、次の3つが示されています[18]。
- 生産地で混入がないことを確認した農産物を袋や専用コンテナに詰めて輸送し、製造者のもとで初めて開封したことが証明されている
- 国産品または非商業栽培国の産品で、生産・流通の過程でGM栽培国からの輸入品(IP済みで混入5%以下のものを含む)と混ざらないことを確認し、その旨が証明されている
- 各事業者の段階でGMが含まれないことが証明され、「GM農産物が含まれない」と記載したIP証明書で取引している
ただし、行政の科学的検証や社会的検証でGMが確認されれば、不適正表示になります[18]。
表示方法
- 一括表示欄に書く場合: 原材料名の次に括弧を付けて「遺伝子組換えでない」等と表示します。欄外に書く場合も、混入のない非GM農産物を使っている旨を表示します[17]。
- 文言: 基準に挙がっている例は「遺伝子組換えでない」「非遺伝子組換え」です。混入のない非GM農産物であることが消費者に明瞭に分かる表示であれば、他の文言でも構いません[11]。
- 原材料名で元の農産物が分からない場合: 「植物油」「でん粉」などは、「でん粉(ばれいしょ(遺伝子組換えでない))」のように対象農産物を明示します[13]。
- 混入率を併記する場合: 併記は可能です。ただし、実際の混入割合が表示した率より高ければ不適正表示になり得ます[20]。
商品全体を強調する表示(「遺伝子組換え原料不使用」等、GM-44)
基本は、「使用している〇〇は遺伝子組換えでないものです。」のように、該当する対象農産物と対応させて表示することです。商品全体に強調表示をするには、副原料や、義務表示の対象外である油・しょうゆ等の原材料も含め、すべての原材料がIP済みで混入なしと認められる必要があります[21]。
次のような場合は、商品全体への強調表示はできません。
- つなぎとして不分別とうもろこし由来のコーンスターチをごく少量(5%未満)加えた場合
- ポテトチップスに不分別大豆由来の大豆油を使った場合[21]
この場合でも、強調表示をせず、一括表示に「ばれいしょ(遺伝子組換えでない)」と書くだけなら可能です[22]。