Q.01

リスクアセスメント対象物質はどう調べればいいですか?

結論: リスクアセスメント対象物かどうかは、厚生労働省の「ラベル表示・SDS交付等の義務対象物質」一覧で、CAS番号や物質名を引いて確認します。この一覧に載っている物質が、そのまま対象物の範囲になります。法令上の対象物は、施行令第18条各号に掲げる物と、法第57条の2第1項の通知対象物です(安衛則第12条の5)[1]。

Approach: 労働安全衛生法・施行令・安衛則の現行条文と、厚生労働省の義務対象物質一覧を確認しました。

1. 法令上の範囲

  • 法第57条の3第1項: 事業者は、第57条第1項の政令で定める物と通知対象物について、危険性・有害性等を「調査しなければならない」と定めています[2]。
  • 主に一般消費者の生活用の製品は除外: 安衛則第12条の5は、この調査から「主として一般消費者の生活の用に供される製品に係るもの」を除いています[1]。
  • 施行令第18条の中身: 別表第9の物、国のGHS分類で危険性・有害性ありとされ厚生労働省令で定める物、それらを含む製剤などです[3]。
    • 別表第9の金属のうち一部(アルミニウム、クロム、ニッケル、マンガンなど)は、「粉状のものに限る」とされています。
    • 製剤は、含有量が厚生労働大臣の定める基準未満であれば除かれます。
  • 厚生労働省令で定める物=安衛則別表第2: 表示対象(安衛則第30条)[4]も、通知対象(安衛則第34条の2)[5]も、どちらも「別表第二の物の欄に掲げる物」です。
  • 表示が不要でも対象になり得る: 安衛則第30条のただし書は、運搬中・貯蔵中に固体以外の状態にならず、粉状にもならない物を表示対象から除いています(危険物や腐食性の物などは除外されません)。一方、第34条の2にはこの除外がありません。また第12条の5は、通知対象物もリスクアセスメント対象物に含めています。このため、ラベル表示の義務がない固体でも、通知対象物であれば対象物になり得ます。

2. 厚生労働省の一覧での調べ方

一覧は厚生労働省のページで公開されています。区分は次の3つです。

区分収録内容
令別表第3第1号(製造許可物質)7行
令別表第934行
安衛則別表第22,464行(グループ見出しと細分を含む)

手順1:CAS番号と物質名で照合します。 ただしCAS番号はあくまで「参考」扱いです[6]。「〜及びその化合物」のようなグループ指定もあるため、CAS番号で見つからなくても、名称でも確認してください。

  • 例:ベンゼンは安衛則別表第2の番号1906、ラベル表示の裾切値0.1%、SDS交付の裾切値0.1%です[6]。
  • 例:トルエンは番号1437、ラベル表示0.3%、SDS交付0.1%です[7]。

手順2:施行日区分(*印)を確認します。 物質によって、対象になる日が違います。

印対象になる時期例
*3令和7年3月31日以前からベンゼン
*4令和7年4月1日からチオシクラム[8]
*5令和8年4月1日からニトリロ三酢酸三ナトリウム[9]
*6令和9年4月1日からニトリロ三酢酸三ナトリウム一水和物[10]
*7令和10年4月1日から四塩化チタニウム[11]

今日(令和8年11月)の時点で*6・*7の物質はまだ対象ではありませんが、今後対象になることが決まっています。

手順3:混合物は、成分ごとに裾切値と比べます。 一覧には、ラベル表示とSDS交付のそれぞれについて裾切値(重量%)が載っています。

3. 対象物に当たった場合の主な義務

  • 実施の時期(安衛則第34条の2の7): 原材料として新しく採用・変更するとき、作業方法・手順を新しく採用・変更するとき、危険性・有害性に変化が生じたときやそのおそれがあるときに行います[12]。
  • 記録と周知(安衛則第34条の2の8): 結果を記録し、次のリスクアセスメントまで(3年以内に再実施した場合は3年間)保存して、労働者に周知します[13]。
  • ばく露の低減(安衛則第577条の2): ばく露の程度を最小限にする必要があります。厚生労働大臣が定める物については、屋内作業場で濃度基準以下に抑えなければなりません[14]。
  • 化学物質管理者の選任(安衛則第12条の5): 事業場ごとに選任が必要です[1]。
  • 一覧にない化学物質(安衛則第577条の3): ばく露を最小限にするよう「努めなければならない」とされています(努力義務)[15]。

調べたい物質のCAS番号や名称を教えていただければ、該当の有無、番号、裾切値、施行日区分をこちらで確認します。

Q.02

対象か分かった後は何をすればいいですか?

対象物だと分かったら、まず事業場ごとに化学物質管理者を選任します。次にリスクアセスメントを実施して記録・周知し、その結果に基づいてばく露を最小限にする措置、健康診断、保護具の使用、教育を進めます。いずれも安衛則上、多くが「しなければならない」と定められた義務です。

Approach: 労働安全衛生法と労働安全衛生規則の現行条文(法第57条の3、安衛則第12条の5・第12条の6、第22条、第34条の2の7〜10、第35条、第577条の2・第577条の2の2、第594条の2・第594条の3)を確認しました。濃度基準値、がん原性物質、皮膚等障害化学物質の具体的な物質と数値は厚生労働大臣の告示で定められており、今回確認した条文には載っていません。

ステップ1:体制をつくる

  • 化学物質管理者の選任: 対象物を製造・取り扱う事業場ごとに選任しなければなりません。選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、必要な権限を与え、氏名を掲示するなどして関係労働者に周知します[1]。
    • 対象物を製造している事業場では、厚生労働大臣が定める講習の修了者、またはこれと同等以上の能力があると認められる者から選びます。
    • 製造せず譲渡・提供だけを行う事業場でも選任が必要です。この場合の管理事項は、表示・SDS交付等と、それに関する教育です。
  • 管理者に任せる事項: 表示・SDS・通知、リスクアセスメントの実施、第577条の2の措置、労働災害が起きたときの対応、記録の作成・保存・周知、労働者への教育です[1]。

ステップ2:リスクアセスメントを実施する(第34条の2の7)

  • 実施する時期: 対象物を原材料等として新しく採用・変更するとき、作業方法・手順を新しく採用・変更するとき、危険性・有害性等に変化が生じた(またはそのおそれがある)ときです。
  • 方法: 業務ごとに、次のいずれか、または併用で行わなければなりません[12]。
    • ① 危険・健康障害が起きるおそれの程度と、その重大さを考慮する方法
    • ② ばく露の程度と有害性の程度を考慮する方法
    • ③ これらに準ずる方法
  • 危険性(爆発・火災など)の評価: ①、または③のうち①に準ずる方法に限られます。
  • 実施方法の詳細は、法第57条の3第3項に基づいて厚生労働大臣が公表する指針に示されます[2]。

ステップ3:結果を記録し、周知する(第34条の2の8)

  • 記録する事項: 対象物の名称、業務の内容、結果、講じる措置の内容の4つです。
  • 保存期間: 次にリスクアセスメントを行うまで保存します。ただし3年以内に再実施した場合は3年間です。
  • 周知の方法: 作業場への常時掲示・備付け、書面の交付、作業場の機器でいつでも確認できる電子ファイルのいずれかで、業務に従事する労働者に周知します[13]。

ステップ4:ばく露を下げる措置を講じる(第577条の2)

  • 第1項(最小限度にする義務): 次のような措置で、ばく露の程度を最小限度に「しなければならない」とされています[14]。
    • 代替物の使用
    • 発散源の密閉
    • 局所排気装置・全体換気装置の設置と稼働
    • 作業方法の改善
    • 有効な呼吸用保護具の使用
  • 第2項(濃度基準): 厚生労働大臣が定める物を扱う屋内作業場では、ばく露を大臣が定める濃度基準以下にしなければなりません(主に一般消費者の生活用の製品に係る業務は除きます)。
  • 第10項(意見聴取): 講じた措置について、関係労働者の意見を聴く機会を設けなければなりません。
  • 法第57条の3第2項(その他の措置): 上記のほかに必要な措置を講じることは、「努めなければならない」という努力義務です[2]。

ステップ5:保護具を管理する

  • 保護具着用管理責任者: リスクアセスメントの結果に基づいて労働者に保護具を使わせるときは、14日以内に、保護具に関する知識・経験のある者から選任します。管理させる事項は、保護具の選択、使用、保守管理です[16]。
  • 皮膚等障害化学物質等(大臣告示の物): 不浸透性の保護衣、保護手袋、履物、保護眼鏡など適切な保護具を「使用させなければならない」とされています(義務)。業務の一部を請負人に任せる場合は、保護具が必要であることを周知します[17]。
  • それ以外の化学物質: 皮膚や眼への障害のおそれがないことが明らかな物を除き、保護具を使用させるよう努めます(努力義務)[18]。

ステップ6:健康診断を行う(第577条の2第3〜9項)

  • リスクアセスメント結果による健診(第3項): 常時従事する労働者について、結果に基づき関係労働者の意見を聴きます。必要と認めるときは、医師・歯科医師が必要と認める項目で健康診断を行います。
  • 濃度基準を超えたおそれがある場合(第4項): 速やかに健康診断を行わなければなりません。
  • 健診の後の対応:
    • 個人票(様式第24号の2)を作成し、5年間保存します。がん原性物質の場合は30年間です。
    • 異常の所見がある労働者については、健診から3か月以内に医師・歯科医師の意見を聴きます。
    • 結果は、受診した労働者に遅滞なく通知します。
    • 医師の意見を踏まえて必要と認めるときは、就業場所の変更や作業の転換などの措置を講じます[14]。

ステップ7:定期的に記録する(第577条の2第11項)

1年を超えない期間ごとに1回、定期に次の記録を作成します[14]。

記録事項保存期間労働者への周知
講じた措置の状況3年必要
ばく露の状況3年(がん原性物質は30年)不要
がん原性物質を扱う労働者の氏名・作業の概要・従事期間・著しい汚染があったときの概要と応急措置30年不要
関係労働者の意見の聴取状況3年必要

がん原性物質を扱う事業者が事業を廃止するときは、がん原性物質関係記録等報告書(様式第24号の3)に、個人票と記録(またはその写し)を添えて、所轄の労働基準監督署長に提出します[19]。

ステップ8:教育と衛生委員会

  • 雇入れ時・作業内容変更時の教育: 原材料等の危険性・有害性と取扱い方法、保護具の性能と取扱い方法、作業手順、事故時の応急措置などを、遅滞なく教育しなければなりません[20]。
  • 衛生委員会での調査審議: 次の事項が付議事項に含まれます[21]。
    • 法第57条の3の調査と、その結果に基づく措置(衛生に係るもの)
    • 第577条の2の措置と健康診断の実施

管理が不十分な場合

化学物質による労働災害が発生した(またはそのおそれがある)事業場で、管理が適切でない疑いがあると認めるときは、労働基準監督署長が改善を指示できます[22]。指示を受けた事業者は、次の対応が必要です。

  1. 化学物質管理専門家から確認と助言を受けます。
  2. 専門家から書面の通知を受けてから1か月以内に改善計画を作成し、実施します。
  3. 改善計画報告書(様式第4号)で監督署長に報告します。
  4. 改善措置の記録を、専門家の通知と改善計画とともに3年間保存します。

対象物の名称と作業内容を教えていただければ、その物質に関係する条文を個別に整理します。

Q.03