毒物及び劇物指定令とは?毒物・劇物・特定毒物の一覧の探し方、濃度による除外の読み方と令和7年の最新改正を解説する
毒物及び劇物指定令(昭和40年政令第2号)は、毒劇法の別表第一・第二・第三の最後の号に基づき、毒物・劇物・特定毒物を指定する政令です。製剤が該当するかは各号の「〇%以下は除く」で決まり、一覧は法の別表と指定令をセットで見ます。現行は令和7年政令第358号、2025年11月1日施行です。
毒物及び劇物指定令とは?条文の構成と読み方、最新の改正
毒物及び劇物指定令(昭和40年政令第2号)は、毒物及び劇物取締法の別表第一第二十八号、別表第二第九十四号、別表第三第十号に基づき、政令で定める毒物(第1条)、劇物(第2条)、特定毒物(第3条)を指定する政令です。製剤が毒物・劇物に当たるか、何%以下なら除外されるかは、主にこの指定令の各号の書き方で決まります。現行の条文は令和7年政令第358号による改正後のもので、2025年11月1日に施行されました(e-Gov 毒物及び劇物指定令)。2026年10月8日時点の改正履歴にも、これより新しい改正政令は掲載されていません(e-Gov 改正履歴)。
毒物・劇物・特定毒物とは
定義は法律側にあります。毒物及び劇物取締法第2条は、毒物を「別表第一に掲げる物であつて、医薬品及び医薬部外品以外のもの」、劇物を「別表第二に掲げる物であつて、医薬品及び医薬部外品以外のもの」と定めています。特定毒物は「毒物であつて、別表第三に掲げるもの」で、毒物の一部です(e-Gov 毒物及び劇物取締法)。医薬品と医薬部外品は、そもそも毒物・劇物の定義から外れます。
法の別表には、物質名がじかに並んでいます。たとえば別表第一の第七号はシアン化水素、第十九号はニコチンです。別表第二の第四号はアンモニアです。各別表の最後の号は、追加の指定を政令に委ねています(法の別表)。
| 法の別表 | 種類 | 政令に任せる号 | 指定令の条 |
|---|---|---|---|
| 別表第一 | 毒物 | 第二十八号 | 第1条 |
| 別表第二 | 劇物 | 第九十四号 | 第2条 |
| 別表第三 | 特定毒物 | 第十号 | 第3条 |
別表第二第九十四号の文言は「前各号に掲げる物のほか、前各号に掲げる物を含有する製剤その他の劇性を有する物であつて政令で定めるもの」です。この「政令」が指定令です。なお現行の指定令は、昭和31年の旧指定令を昭和40年に全部改正したものです(e-Gov 毒物及び劇物指定令)。
指定令の構成
第1条は毒物を、第2条第1項は劇物を、第3条は特定毒物を指定します。第2条には「ただし、毒物であるものを除く」とあり、毒物は劇物の指定対象から外れます(指定令第1〜3条)。
指定には枝番(「一の二」など)も使われます。新しい号を途中に加えると、後ろの枝番が変わる場合があります。2025年の改正では、旧「八十五の七」から「八十五の十四」が一つずつ繰り下がりました(e-Gov 毒物及び劇物指定令)。古い社内資料や SDS の号番号は、現行条文で確かめ直してください。
劇物一覧・毒物一覧の探し方
いちばん確かなのは、e-Gov の条文そのものです(e-Gov 毒物及び劇物指定令)。ただし e-Gov は「燐りん」「弗ふつ」のように、読みを本文へ入れます。漢字で検索してください。
物質名で探すなら、厚生労働省の「毒物劇物の定義、検索、有害性情報」のページが使えます。このページは令和7年政令第358号までを収載しています(厚生労働省)。
国立医薬品食品衛生研究所(NIHS)の毒劇物一覧と検索用ファイルは、最終更新が2024年5月30日で、令和6年政令第196号までしか入っていません。ページには「ファイルの検索項目は除外規定を考慮していません。」とも書かれています(NIHS 毒劇法)。このファイルだけで「載っていないから対象外」と判断しないでください。
メタノールやアンモニア、硫酸のような基本的な物質は、原体が法の別表第二にじかに載っています(アンモニアと硫酸の製剤は指定令側)。指定令だけを探して見つからなくても、劇物でないとは言えません。法の別表と指定令はセットで見てください。
各号の読み方と3つの書き方
指定令の各号は、だいたい次の3つの型に分かれます。
1つ目は、物質名だけの号です。第2条第1項第七十六号の二「トルエン」、第十七号の三「塩素」、第1条第二十三号の二「ヒドラジン」がそうです。この型では、その号が指定するのは物質そのものだけです。「及びこれを含有する製剤」がない以上、トルエンを含む混合物はこの号では劇物になりません(ほかの成分が別の号に当たれば別です)(指定令第1・2条)。
2つ目は、物質と製剤の両方を指定し、除外がない号です。第2条第1項第一号の三「アクリルアミド及びこれを含有する製剤」が例です。この号には含有率による除外がありません(指定令第2条)。
3つ目は、濃度で除外する号です。
| 指定令の号 | 対象 | 除外される製剤 |
|---|---|---|
| 第1条第一号(毒物) | アジ化ナトリウム及びこれを含有する製剤 | 0.1%以下 |
| 第2条第1項第八号 | アンモニアを含有する製剤 | 10%以下 |
| 第2条第1項第十九号 | 過酸化水素を含有する製剤 | 6%以下 |
| 第2条第1項第六十八号 | 水酸化ナトリウムを含有する製剤 | 5%以下 |
| 第2条第1項第百四号 | 硫酸を含有する製剤 | 10%以下 |
| 第2条第1項第百八号 | レソルシノール及びこれを含有する製剤 | 20%以下 |
(出典:e-Gov 毒物及び劇物指定令)
除外の言い方は「以下」です。硫酸だけを見れば、ちょうど10%の製剤はこの号の対象から外れ、10%を超える製剤は対象です。アンモニアや硫酸の号が「を含有する製剤」だけなのは、原体が法の別表第二に載っているからです(アンモニアは第四号)。
除外が濃度だけで決まらない号もあります。第2条第1項第百五号の硫酸タリウム製剤は、0.3%以下で、しかも「黒色に着色され、かつ、トウガラシエキスを用いて著しくからく着味されているもの」に限って除外されます。硝酸タリウム、チオセミカルバジド、硫酸タリウム、燐化亜鉛は、製剤中で均等でないとき、第2条第2項により製剤10g中の重量で割合を計算します(指定令第2条)。第十号のダイアジノンは「五%(マイクロカプセル製剤にあつては、三〇%)以下」です。第1条第八号の無機シアン化合物のように、紺青やフエリシアン塩など特定の化合物を除く号もあります。第2条第1項第三十二号の有機シアン化合物には長い除外リストがあり、「アセトニトリル四〇%以下を含有する製剤」もその一つです。
混合物は成分ごとに見ます。一つの成分がその号に当たれば、別の成分が除外濃度以下でも、混合物は毒物または劇物です。第2条第1項第十六号の二は、塩化水素と硫酸を合わせて10%以下なら除外します。濃度だけでなく、化合物や製剤の条件も各号の全文で確認してください(指定令第1・2条)。
毒物と劇物の違い
法律上の違いは、どちらの別表・条に載っているかです。厚生労働省の「毒物劇物の判定基準」(令和7年3月6日改定)は、指定令を作ったり改めたりするときに薬事審議会が参考にする基準です。会社が自分で LD50 を計算して判定するためのものではありません(判定基準(NIHS掲載))。
目安として、経口 LD50 は毒物が50 mg/kg以下、劇物が50 mg/kg超300 mg/kg以下です。経皮 LD50 は毒物が200 mg/kg以下、劇物が200 mg/kg超1,000 mg/kg以下です。皮膚や眼などの粘膜に重い傷害を起こす物質も、基準上は劇物と判定されます(毒物劇物の判定基準)。
製剤の除外についても、この基準に方針があります。毒物の製剤は「原則として、除外は行わない」とされています。皮膚や粘膜の刺激で劇物になった物の製剤は、含有率3%未満が除外の目安です。pH2以下の酸と、pH11.5以上の塩基などは、1%未満です。これらは審議の方針であって、号の文言ではありません(判定基準)。たとえば指定令第1条第二十号「ニコチンを含有する製剤」には除外がありません。実際の線は、各号に書かれた条件です。
指定されると、法の規制がかかります。販売・授与を目的とする製造・輸入や、販売・授与には、第3条に基づく業の登録が必要です。特定毒物の製造は、毒物劇物製造業者か、許可を受けた特定毒物研究者に限られます(第3条の2)。毒物劇物営業者は、第7条により取り扱う事業所ごとに毒物劇物取扱責任者を置きます。容器と被包には第12条第1項により「医薬用外」の文字と、毒物は赤地に白色で「毒物」、劇物は白地に赤色で「劇物」の表示が必要です(e-Gov 毒物及び劇物取締法)。
最新の改正(令和7年政令第358号)
直近の改正は令和7年政令第358号です。2025年10月29日に公布され、11月1日に施行されました(厚生労働省 医薬発1029第1号)。
- 劇物に追加:フエナザキン及びこれを含有する製剤(第2条第1項第八十五号の七)。19.4%以下を含有するものは除外です。
- 劇物から除外:塩素酸塩類(第十八号)のただし書に、塩素酸ナトリウム47.5%以上52.5%以下で、炭酸水素ナトリウム27%以上37%以下を含む製剤(粉粒状に加工したものを除く)が加わりました。爆発薬の除外は残っています。この追加分だけが公布の日から施行です。
- 経過措置:施行日に既に製造・輸入・販売を営んでいた事業者には、第3条、第7条、第9条が2026年1月31日まで適用されませんでした。施行日に既にあった在庫の表示(第12条第1項・第2項)も同じ日までです。猶予期間は過ぎています(e-Gov 毒物及び劇物指定令 附則)。
政令と同じく2025年10月29日に公布された厚生労働省令第107号で、フエナザキンが農業用品目に加わりました(11月1日施行)。一つ前の令和6年政令第196号(2024年6月1日施行)では、フルペンチオフエノツクス及びこれを含有する製剤が、除外なしで劇物に加わりました。シクロピラニルの製剤は除外され、ダイアジノンは30%以下のマイクロカプセル製剤も除外です(厚生労働省 医薬発0529第1号)。
e-Gov の改正履歴を見ると、2022年2月、2023年6月、2024年6月、2025年11月と、ほぼ年1回のペースで数物質ずつ追加・除外されています(e-Gov 毒物及び劇物指定令)。自社の製剤がどの号に当たり、除外濃度がいくらかは、RegAffairs AI のこの回答ページから続けて質問できます。
次の改正は、厚生労働省の毒物劇物ページと e-Gov で確認してください。2026年9月10日の令和8年度第1回毒物劇物調査会は、「劇物の指定について」「劇物からの除外について」などを議題にしました。対象の物質名は公表されていません(厚生労働省)。