化粧品の使用期限表示は必要か
化粧品に使用期限の表示は必要ですか?
結論: 日本の化粧品すべてに使用期限の表示が要るわけではありません。厚生労働大臣が指定した化粧品だけが対象です。具体的には、①アスコルビン酸(そのエステル・塩類を含む)または酵素を含む化粧品、②①以外で、製造または輸入の後に適切な条件で保存しても3年以内に性状や品質が変わるおそれのある化粧品、の2種類です。製造または輸入の後、3年を超えて性状と品質が安定している化粧品は、表示しなくてかまいません。
根拠(日本)
- 薬機法第61条:化粧品の直接の容器または直接の被包に書かなければならない事項を定めています。第5号は「厚生労働大臣の指定する化粧品にあつては、その使用の期限」です。ほかに、製造販売業者の氏名・名称と住所(第1号)、名称(第2号)、製造番号または製造記号(第3号)なども必要です。同条の但し書きにより、厚生労働省令で別に定めた場合はこの限りではありません。[1]
- 昭和55年厚生省告示第166号(「使用の期限を記載しなければならない医薬品等」):第61条第5号などに基づく告示で、化粧品については次の2号を指定しています。(厚生労働省 法令等データベース)
- 第一号:「アスコルビン酸、そのエステル若しくはそれらの塩類又は酵素を含有する化粧品」
- 第二号:「前号に掲げるもののほか、製造又は輸入後適切な保存条件のもとで三年以内に性状及び品質が変化するおそれのある化粧品」
- 除外規定:「製造又は輸入後適切な保存条件のもとで三年を超えて性状及び品質が安定な医薬品、医薬部外品及び化粧品」は対象外です。条文は化粧品全般にかかる書き方なので、アスコルビン酸や酵素を含む製品でも、3年を超えて安定していれば除外されると読めます。
実務上は、3年を超えて安定していることを安定性試験などで裏づけられれば、表示は不要です。裏づけがなければ使用期限を記載します。なお、施行規則第90条は、使用期限の記載が義務になっている化粧品について、製造・試験の記録を「有効期間に一年を加算した期間」保管するよう求めています。表示義務の有無は記録の保管期間にも関わってきます。[2]
参考:EUに輸出する場合
EU化粧品規則(Regulation (EC) No 1223/2009)第19条1項(c)は、原則として「date of minimum durability」(使用推奨期限、月・年または日・月・年)の表示を求めています。ただし、最低耐久期間が30か月を超える製品はこの表示が不要で、代わりに開封後使用期間(PAO、Annex VII第2点の記号と月数・年数)を表示します。開封後の耐久性という考え方が当てはまらない製品は、PAOの表示も要りません。[3] 日本の「3年」とEUの「30か月」は基準が違うので、両方で販売する製品は別々に判断する必要があります。
調べた範囲: 薬機法と同法施行規則の現行条文、EU化粧品規則の現行統合版を確認し、使用期限の対象を指定する告示は厚生労働省の法令等データベースで原文を確かめました。告示の運用を説明した昭和55年の厚生省通知は、公式の原文が見つからなかったため確認していません。
表示しなくていいのはどんな場合?
使用期限を表示しなくてよいのは、大きく分けて次の3つの場合です。①そもそも告示で指定された化粧品に当たらない場合、②製造または輸入の後、3年を超えて性状と品質が安定している場合、③小さな直接の容器で、外箱などの外部の容器・被包に使用期限が書いてある場合です。③では、直接の容器への記載だけを省略できます。
① 指定外の化粧品 薬機法第61条第5号で使用期限の表示が必要なのは、「厚生労働大臣の指定する化粧品」に限られます [1]。昭和55年厚生省告示第166号が指定しているのは、次の2種類です(告示第166号)。
- アスコルビン酸(そのエステル・塩類を含む)または酵素を含む化粧品
- それ以外で、適切な条件で保存しても3年以内に性状や品質が変わるおそれのある化粧品
どちらにも当たらない化粧品は、使用期限を表示する義務がありません。
② 3年を超えて安定している場合(告示の除外規定) 告示は、適切な条件で保存して、製造または輸入の後3年を超えて性状と品質が安定している化粧品を対象から外しています(告示第166号)。告示を出したときの施行通知(昭和55年10月9日薬発第1330号)も、3年を超えて安定なものを除外すると説明しています(薬発第1330号)。この除外を使うには、安定性試験などで3年を超える安定性を裏づけておく必要があります。
③ 小さな容器の表示の特例(直接の容器だけ省略できる)
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施行規則第221条の3第1項は、医薬品向けの第211条第1項・第2項を化粧品にも準用しています。読み替え表では、第211条の「法第五十条第十六号」が「法第六十一条第五号」(使用の期限)に置き換わります(e-Gov 施行規則第221条の3)。
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第211条第1項: 直接の容器・被包が狭くて記載事項をはっきり書けない場合が対象です。外部の容器・被包に記載があれば、直接の容器では「使用の期限」を「省略することができる」とされています。対象になる容器は次の2つです(e-Gov 施行規則第211条)。
- 2mL以下のアンプル、またはそれと同じくらいの大きさの容器・被包
- 2mLを超え10mL以下で、ガラスなどの材質でできており、記載事項を容器に直接印刷している容器
同じ条件のもとで、製造番号・製造記号は省略でき、製造販売業者の名称・住所は略名や登録商標に代えられます。
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第211条第2項: 第1項の特例を使ってもはっきり書けないほど面積が狭く、厚生労働大臣の許可を受けた場合は、外部の容器・被包に記載があれば、直接の容器には第61条の事項を書かなくてかまいません。
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富山県の解説も、化粧品について同じ内容(第211条第1項による使用期限の省略、第2項による許可を受けたうえでの省略)を説明しています(富山県 化粧品の表示)。
③で省略できるのは直接の容器への記載だけで、使用期限の表示義務そのものはなくなりません。外箱には必ず書く必要があります。また、施行規則第221条の2(50mL以下の容器なら添付文書への記載でよい、など)は全成分表示(第61条第4号)についての特例で、使用期限には使えません(e-Gov 施行規則第221条の2)。
調べた範囲: e-Govで施行規則の該当条文(第211条、第221条の2、第221条の3)を直接読み、告示第166号と施行通知は厚生労働省の法令等データベースで確認しました。薬機法・施行規則の収録テキストは今回は検索できなかったため、第61条は前回の回答で確認した内容を引用しています。
ほかに法律で表示が必要な項目は?
使用期限のほかにも、薬機法第61条は化粧品の直接の容器または直接の被包に、①製造販売業者の氏名・名称と住所、②名称、③製造番号または製造記号、④指定成分の名称(実務上は全成分)、⑥化粧品基準で定められた事項、⑦省令で定める事項、の記載を求めています(e-Gov 薬機法第61条)。さらに第62条の準用で、外箱への記載、記載の方法、書いてはいけない事項の規定も化粧品にかかります。
1. 薬機法第61条の記載事項(直接の容器・被包)
| 号 | 記載事項 | 補足 |
|---|---|---|
| 1 | 製造販売業者の氏名または名称と住所 | 都道府県知事が製造販売業の許可事務を行う場合、「住所」は総括製造販売責任者が業務を行う事務所の所在地と読み替えます(施行規則第213条第1項を第221条の3で準用)。製造専用化粧品では「製造販売業者」が「製造業者」になります(第214条第1項) |
| 2 | 名称 | 富山県の解説では、製造販売届書で届け出た販売名とされています |
| 3 | 製造番号または製造記号 | |
| 4 | 大臣が指定する成分を含む化粧品は、その成分の名称 | 富山県の解説では「全成分を表示」です。製造専用化粧品には適用されません(第214条第2項の準用) |
| 5 | 指定化粧品の使用期限 | 前回までに説明したとおりです |
| 6 | 第42条第2項の基準(化粧品基準)が定められた化粧品は、その基準で直接の容器・被包に書くよう定められた事項 | |
| 7 | 厚生労働省令で定める事項 | 施行規則第221条:外国製造の特例承認(法第19条の2)を受けた化粧品に限り、特例承認取得者の氏名と住所地の国名、選任製造販売業者の氏名と住所(e-Gov 第221条) |
出典:e-Gov 施行規則第221条の3、第213条、第214条、富山県 化粧品の表示
2. 全成分表示の書き方(第4号) 富山県の解説は、平成13年3月6日付の医薬審発第163号・医薬監麻発第220号「化粧品の全成分表示の表示方法等について」の内容を次のように要約しています(富山県)。
- 成分名は邦文で書き、「化粧品成分表示名称リスト」を使う
- 配合量の多い順に書く。ただし1%以下の成分と着色剤は順不同でよい
- キャリーオーバー成分は表示しなくてよい
- 混合原料は成分ごとに分けて書く
- 香料は「香料」とまとめて書ける
第4号で成分を指定している告示そのものの原文は、今回は確認していません。
3. 第62条で準用される規定 第62条は、第51条、第52条第2項、第53条〜第57条を化粧品に準用しています(e-Gov 第62条)。
- 外部の容器・被包への記載(第51条):直接の容器に書いた第61条の事項が、小売用の外箱などを透かして簡単に見えない場合は、外箱などにも同じ事項を書きます(第51条)。
- 使用上の注意(第52条第2項の準用):添付文書または容器・被包に「用法、用量その他使用及び取扱い上の必要な注意」などを書きます(第52条)。
- 記載の方法(第53条、施行規則第217条第1項・第218条):記載事項は、ほかの文字や図案と比べて見やすい場所に、読みやすく理解しやすい用語で正確に書きます(第53条)。特に明瞭に書く必要があり(第217条第1項)、邦文で書かなければなりません(第218条)(第53条、第217条、第218条)。
- 書いてはいけない事項(第54条の準用):容器・被包・添付文書に、次のことを書いてはいけません(第54条)。
- 虚偽または誤解を招くおそれのある事項
- 承認を受けていない効能・効果
- 保健衛生上危険な用法・用量・使用期間
4. 業界の公正競争規約(薬機法以外) 富山県の解説によると、「化粧品の表示に関する公正競争規約」第4条は、薬機法の事項に加えて次の表示を求めています(富山県)。
- 種類別名称
- 内容量
- 原産国名
- 使用上・保管上の注意
- 問い合わせ先
規約の原文は今回は確認していません。
調べた範囲: 収録している薬機法・施行規則のテキストは今回は検索できなかったため、e-Govで薬機法第51条〜第54条・第61条・第62条と施行規則第213条・第214条・第217条・第218条・第221条・第221条の3を直接読み、運用面は富山県の解説で補いました。全成分表示の通知と公正競争規約は、原文ではなく富山県の要約に基づいています。