ポジティブリスト適合証明書の書き方と雛形:食品衛生法の説明義務と記載項目
ポジティブリスト適合証明書は食品衛生法に名前のある書類ではなく、法定の雛形もありません。第53条が求めるのは販売先への「説明」です。誰が誰に出すのか、書き方と記載項目、適合宣言書・適合確認書との関係を条文と消費者庁の通知で解説。原材料供給者の努力義務、使用条件の共有、変更時の連絡も確認できます。
ポジティブリスト適合証明書の書き方と食品衛生法の説明義務
「ポジティブリスト適合証明書」は食品衛生法に名前のある書類ではなく、法定の様式や雛形もありません。法律が求めるのは、合成樹脂を使った器具・容器包装を販売する者、または販売目的で製造・輸入する者が、販売先に適合性等を説明することです(食品衛生法第53条第1項)。方法は指定されていませんが、記録や保存で後から確認できるようにしておく必要があります(施行通知)。
取引先では「適合宣言書」「適合確認書」「食品衛生法適合証明書」とも呼ばれます。どれも食品衛生法上の書類名ではありません。見るのは、対象の器具・容器包装が特定され、適合性等を確認できる情報が伝わっているかどうかです(施行規則第66条の6)。
法律が求めているのは「説明」
食品衛生法第53条第1項は、政令で定める材質の原材料を使った器具・容器包装を「販売し、又は販売の用に供するために製造し、若しくは輸入する者」に、販売の相手方への説明を義務づけています。説明する内容は次のどちらかです(食品衛生法)。
- 規格(ポジティブリスト)に適合した原材料だけを使っていること(第1号)
- 第18条第3項ただし書の加工がされていること(第2号)。食品に接触しない部分で、人の健康を損なうおそれのない量を超えて溶出・浸出しないよう加工された場合です。食品接触部分に使う場合は除かれます。
政令で定める材質は合成樹脂です(食品衛生法施行令第1条)。熱可塑性プラスチック、熱硬化性プラスチック、熱可塑性エラストマーを含み、ゴム(熱硬化性エラストマー)は含みません(消費者庁 Q&A 問1)。ポジティブリストの対象は合成樹脂だけで、紙、金属、ガラス単体は対象外です。ただし食品接触面に合成樹脂の層があれば、情報伝達の対象になります(厚生労働省 旧Q&A 問18)。
第53条第1項に違反すると、第60条の処分の対象です。都道府県知事は、営業の全部または一部の禁止や停止をすることができます。輸入営業者については、厚生労働大臣も同じ処分ができます(食品衛生法)。
誰が誰に出すのか
情報は売り手から買い手へ、川下に流れます。ただし段階によって義務の強さが違います(食品衛生法、施行通知)。
| 出す側 | 受け取る側 | 法的性格 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 樹脂・添加剤などの原材料メーカー、輸入者、販売者 | 器具・容器包装メーカー | 確認を求められた場合の努力義務 | 第53条第2項 |
| 器具・容器包装メーカー、輸入者 | 販売の相手方(販売業者、食品事業者) | 義務 | 第53条第1項 |
| 器具・容器包装の販売業者 | 食品事業者 | 義務 | 第53条第1項 |
原材料メーカーの説明は、求められたときに「努めなければならない」とされるだけです。容器包装の製造者、輸入者、販売者の説明は「しなければならない」義務です。
食品事業者から消費者への説明は第53条に規定がありません。施行通知も、営業者間の情報伝達を想定したものだとしています(施行通知)。
説明の方法を決めているルール
具体的な方法は食品衛生法施行規則第66条の6が定めています(施行規則)。器具・容器包装の販売・製造・輸入者は、次の2点を行わなければなりません。
- 説明の対象となる器具・容器包装を特定し、第53条第1項第1号か第2号に当たることが確認できる情報を伝える
- 伝達の体制を整え、情報に変更があれば速やかに伝える
原材料の販売・製造・輸入者には、同じ内容が努力義務としてかかります(同条第2項)。
規格基準の所管は2024年4月1日に厚生労働省から消費者庁へ移りました(消費者庁)。ただし説明の方法を定める施行規則は今も「厚生労働省令」です(食品衛生法)。
消費者庁が掲載している施行通知(令和元年11月7日 生食発1107第1号、最終改正 令和6年3月28日、令和7年6月1日から適用)は、この条文の運用をこう説明しています(施行通知 第1 ハ)。
- 伝える内容は、ポジティブリストへの適合性等の確認に役立つ情報で、「必ずしも個別物質の開示等が必要ではない」
- 「情報を伝達する方法は特段定めない」。ただし記録や保存などで、事後的に確認する手段を確保する
- 契約時の仕様書、入荷時の品質保証書、業界団体の確認証明書など、適合性を傍証する書類も使える
つまり、独立した「証明書」を新しく作らなくても構いません。仕様書や品質保証書に必要な情報が入っていれば、それで説明になります。
適合証明書の書き方と雛形の記載項目
法定の雛形はなく、仕様書や品質保証書も使えます(施行通知)。以下は、上の条文と通知から組み立てた記載項目の参考例です。公式のフォーマットでも、法定の必須項目一覧でもありません。
| 項目 | 書く内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 発行者、宛先、発行日 | 誰が、誰に、いつ伝えたか | 事後確認の手段(施行通知) |
| 対象製品 | 品名、品番、規格など | 施行規則第66条の6第1項第1号 |
| 適合の区分 | 第53条第1項第1号(適合原材料のみ使用)か第2号(非接触部分の加工)か | 第53条第1項 |
| 使用条件 | 使用可能な食品、温度範囲など | 施行通知、製造管理の手引き |
| 変更時の連絡 | 情報が変わったら速やかに知らせる旨 | 施行規則第66条の6第1項第2号 |
| 根拠法令 | 食品衛生法第18条第3項・第53条、施行規則第66条の6、告示第370号別表第1 |
個別物質の開示は一律に必要とされていません。ただし、適合性等を確認できる情報は必要です(施行通知)。取引先が求める情報と、法令上の説明に必要な情報を分けて確認してください。
製造管理の手引き(令和6年3月28日)は、使用可能な食品や温度範囲を販売先と共有し、その内容を記録するよう求めています。必要に応じて、耐水性、耐油性、耐圧性、耐熱性、保管条件、使用期限、使用前の洗浄や殺菌の要否、自主検査の結果も共有します。第53条の説明と一緒に伝えてよいとしています(手引き p.18)。
2019年の厚生労働省の説明資料には、基ポリマーごとの「食品区分」と「最高温度」が載っています。その制限は、もうありません。令和5年厚生労働省告示第324号で第1表から削除され、令和7年6月1日から適用されています。第2表の使用制限も「合成樹脂区分」から「材質区分」に変わりました(告示第324号)。古い雛形を使うなら、この欄は書き直してください。
業界団体の確認証明書
業界団体が発行する確認証明書も、説明に使えると施行通知に書かれています。消費者庁のポジティブリストのページには、日本プラスチック食品容器工業会、日本乳容器・機器協会、発泡スチロール協会、日本電機工業会の資料が載っています(消費者庁)。各団体の証明の中身と条件は、それぞれの資料で確認してください。
経過措置が終わった今の扱い
制度は2020年6月1日に始まり、経過措置は2025年5月31日に終わりました(消費者庁)。令和7年6月1日以降に製造・輸入する器具・容器包装には、別表第1に収載された物質を使う必要があります(消費者庁 Q&A 問43)。
RegAffairs AIの適合証明書についての回答では、説明義務と書き方を引用元つきで確認できます。